皆様。こんにちは。

今日のお話はレポジトリーでの異常所見についてです。と言ってもセリで馬を売買する際の異常所見のお話ではありません。レポジトリーの検査業務に携わっていると、たまにあるのがセリに上場する前に牧場さんでレポジトリー検査を行った際に、偶然にもOCDやボーンシストなどの病変が見つかってしまう。といったケースです。

ありゃ~泣。となってしまう瞬間です。

セリではレポジトリー検査として上場馬の四肢レントゲン画像、喉頭部の内視鏡動画が提示されています。我々獣医師はセリ前に上場馬のこれらの検査を行い、セリの運営者に提出します。ところがそのセリ前のレポジトリー検査を行うタイミングで異常所見が発見されてしまうケースが稀にあります。今日の話題はこちらです。

レポジトリーは購買者さんが市場(セリ)で馬を購入する際に、骨疾患や呼吸器疾患がないかを確認するために公開されています。ここでいう骨疾患とは何でしょうか。以下がレポジトリーで見られる所見の代表的なものです。皆様もご存じの病気がほとんどかも知れません。

・OCD(離断性骨軟骨症)
・ボーンシスト(軟骨下骨嚢胞)
・骨端炎
・種子骨炎
・微小骨折や骨折痕

他にもレポジトリーで認められる所見はありますが、代表的なものはこれらでしょうか。これらのうちの多くはDOD(発育期整形外科的疾患)と分類される疾患です。セリで主に売買される馬は1歳(若馬)のため、これらのような発育期に特徴的な病変が認められることがあります。これらの所見があってもその馬が競走馬になれないのかと言われるとそんなことは全くなく、疾患の種類や程度によっては予後に影響のないものから、手術をすれば予後が良いものorあまりヨロシクないものなどなど多岐にわたります。

ちょっと視点を変えて、もしセリの購買者(馬主さん)だったらレントゲンにこれらの所見があったらいかがでしょう・・・。理解したうえで買う。いや、多少でもリスクがあるから買わない。競り合う人が減るかもしれないからラッキーかな。・・・などと考えるでしょう。難しいですね~。

とは言えほとんど所見が無ければ安心して購入に踏み切れるわけですから、オーナー様にとっては不安の付きまとう購買になってしまうかも知れません。

一方で愛馬を上場する生産者にとっても死活問題です。治るかもしれない病気が原因で、馬が売れなかったり、せっかく競り合ってもらえる購買者数に影響してしまったり。という可能性を生じてしまいます。

一般に生産牧場では同世代の複数頭の馬が生産されていることがほとんどかと思います。そうした中から馬の成長度合、血統、近親馬の実績など様々な要素を考慮して、セリで売買する馬や、直接売買する馬、クラブ法人などに入る馬、あるいはご自分で所有する馬などに分かれると思います。それぞれの馬の現状を踏まえた管理がリスクヘッジにもつながります。

一般的にはセリの1ヵ月前くらいでレポジトリー検査を行うことが一般的かと思われますので、もしそこで比較的大きな疾患が見つかってしまった場合は、そのまま販売するorセリの上場を辞めるという選択を迫られることになります。

そこで当院でお勧めしているのはプレレポジトリー検査(化骨検査)、購買前(時)検査です。セリに上場を検討していたり、オーナー様への直接販売を検討している馬において、1発勝負ではなくレポジトリーよりも早めのタイミングでスクリーニング的に検査をしてしまいましょう。というお話です。

推奨時期としましては晩秋(11月前後)から年明け2月頃をお勧めいたします。この時期ですと疾患によっては、手術を行ったり運動量をコントロールすることで、より良い条件で販売に迎えることが出来る可能性が高まります。その他にもメリットがあります。

その他のメリット

・DOD発育期整形学的疾患の早期摘発(必要なら手術したうえでセリの上場を目指せる可能性も)
・購買する側にとっても購入後に手術を行う(一定期間の休養とリハビリが必要になってしまう)などがないため、スムーズに育成調教に移ることが出来る。
・牧場や群全体の骨疾患の状況を把握できる。
・安心してセリ、売買に挑める(購買者も生産者も)。
・これらが原因による販売価格の低下や販売機会の喪失を防げる。
これらが主なメリットです。

デメリットは以下です
・お金が掛かる
・時間と手間がかかる

まとめ
当院では特定時期(離乳後の秋以降~翌早春にかけて)にプレレポジトリー検査を行うことを推奨しています。これにより生産馬の販売機会の喪失を防ぎ、必要な馬については早期に手術を行うなどの対策も講じることが出来ます。もし疾患が見つかってもその種類や程度によっては、適切な手術やケアを行うことで、セリのシーズンに十分間に合う可能性があります。さらに販売機会を除外して考えても、育成段階や競走段階で調教機会のロスを減らすことにもつながります。また牧場や群における一定以上のDODの発生は、飼養管理や放牧管理が原因となっている可能性もあります。最終的にはそうしたところにまでフィードバックを繋げられるため、牧場の生産性も向上させることにつながる可能性があります。このような点からもプレレポジトリー検査は非常に有用な検査です。

もちろん時間、手間ともにかかる検査ではありますが、スムーズに行えれば1頭当たり10分から20分程度で行うことが可能です。実施可能な頭数にも限りがございますが、ご関心がある方は直接獣医師までご相談してください。
これらの検査は日程を調整の上実施しています。

プレレポジトリーで販売機会や調教機会の喪失を防ぎ、また牧場における飼養管理や放牧管理の向上につなげて行きましょう!

今日はここまで。

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